パルマ在籍の日本代表GK鈴木彩艶選手は今季、セリエAに昇格したパルマに移籍して「GK大国」と言われるイタリアでレギュラーの座をつかみ、その活躍により移籍金が高騰するとともに、欧州の複数のビッククラブからの関心が寄せられています。この記事ではその内容を記しています。
リーダーシップと存在感
2024-25シーズンのセリエA最終節、パルマはアウェーでアタランタと対戦し、劇的な逆転勝利でセリエA残留を果たしました。この試合で特に注目を集めたのが、日本代表GK鈴木彩艶選手のパフォーマンスです。
32分と33分に立て続けに失点し、苦しい立ち上がりとなったパルマ。しかし、チームは49分、71分、そして後半アディショナルタイムにヤコブ・オンドレイカの決勝点で3-2の大逆転勝利を収めました。この劇的な展開の陰には、鈴木選手の冷静な対応と決定機を阻止する好守がありました。
試合後にはチームメイトたちとともにサポーターの前で歓喜を爆発させ、鈴木選手はその先頭に立って飛び跳ねながら盛り上げました。彼の姿は、シーズンを通してチームを支え続けた守護神の象徴として印象的でした。
POV: ti sei appena appena salvato con il Parma Calcio #AtalantaParma #SerieAEnilive pic.twitter.com/xKkZqHPMRP
— (@1913parmacalcio) May 25, 2025
イタリアメディアも絶賛
イタリア国内のサッカー専門メディア『DAZNイタリア』では、試合中の鈴木選手のプレーに対して多くの称賛が寄せられました。
序盤5分には、アタランタの攻撃から生まれたクロスボールに的確に対応。決定機を作ろうとしたイタリア代表FWマテオ・レテギのシュートを阻止し、前半29分にもベッラノーヴァからのグラウンダークロスに対して完璧なポジショニングで対応しました。
実況を務めたアルベルト・サンティ記者は「スズキの反応は見事だった」と評し、解説のアレッサンドロ・ブデル記者も「確実な決定機だったが、彼の冷静な判断力が勝った」とコメント。守護神としての存在感が改めて証明されました。
また、失点シーンについても、守備陣の限界やアタランタ側の技術を評価する声が多く、鈴木選手の責任を問う声は少なかった点も特筆すべきです。
セリエA初挑戦での活躍
2023年夏、ベルギーのシント=トロイデンからイタリアへ渡った鈴木彩艶選手。セリエAという「GK大国」に日本人GKとして初めて挑戦したその歩みは、当初懐疑的な目を向けられていたことも事実です。
しかし、彼はシーズン開幕からポジション争いを制し、レギュラーとして37試合に出場。唯一の欠場は第4節での出場停止によるもので、実質的にチームの絶対的守護神として全試合を戦い抜きました。
特筆すべきは、途中で監督が交代したことによる戦術の大きな変化にも対応した点です。攻撃重視のファビオ・ペッキア前監督のもとでは、ハイリスクな展開に晒される中で多くのシュートを受ける展開が続きましたが、その中でもシュートストップ能力や高精度なフィードを武器に存在感を放ちました。
そして、守備的な戦術を採用したクリスティアン・キブ新監督のもとでは、より安定感のあるセービングと判断力が評価されるようになり、クリーンシートも後半戦で一気に増加。彼の成長は数値にも如実に表れており、1試合あたりの失点は1.76から1.08へと改善しました。
ビッグクラブからも注目
こうした活躍を背景に、鈴木選手のもとにはすでに欧州中から注目が集まっています。
イタリアメディアでは「欧州の半分から求められている」と報じられ、過去にはチェルシーやバイエルンといったビッグクラブの名前も挙がりました。
一方で、現実的な移籍先としてトリノの名前も浮上。正GKミリンコビッチ=サビッチの後釜としての可能性が噂されています。イタリア国内でのステップアップは、出場機会を失うリスクを最小限に抑えつつ、さらに評価を高めるうえで有力な選択肢となるでしょう。
ただし、パルマとしては、セリエA残留を支えた若き守護神を簡単には手放したくないはずです。将来的な市場価値の高さを考慮しても、現時点での売却は得策ではないと見る向きもあります。
鈴木彩艶選手の移籍金
パルマ専門メディア『PARMA live』やイタリア各紙によると、パルマは鈴木選手に対して非公式ながら移籍金を4500万ユーロ(約72〜73億円)に設定したとされています。
鈴木選手は、序盤は確かにパフォーマンスに波がありました。しかし、最近では「直近の数週間でレベルが上昇した」と評価されています。何よりも安定感のあるセービングと成長ぶりが注目されています。
こうした活躍により、ドイツの移籍情報サイト『Transfermarkt(トランスファーマルクト)』は、鈴木選手の市場価値を900万ユーロ(約14億円)から1400万ユーロ(約22億円)へと大幅に更新し、現在はセリエAのGKで5番目に高い市場価値を誇っています。
パルマは、昨年マンチェスター・ユナイテッドがオナナ選手の獲得に支払った金額をやや下回る水準に設定したとされており、鈴木選手が今後のヨーロッパの移籍市場でどのような動きを見せるのか、注目が集まっています。
— (@1913parmacalcio) May 26, 2025
日本人GKの可能性を拡張
セリエAにおいて、1年目からこれほどのインパクトを残した日本人選手は稀です。中田英寿氏や長友佑都選手、冨安健洋選手といった過去の名選手たちがそれぞれ強烈な印象を残した初年度と並び、鈴木選手の活躍も確実に歴史に刻まれました。
特にGKという専門性の高いポジションにおいて、日本人選手が欧州5大リーグでレギュラーとして戦い抜いた例はほとんどありません。鈴木選手の存在は、日本サッカー界にとっても新たな可能性を示すものとなりました。
来季への挑戦
2025-26シーズンは、ワールドカップに繋がる重要な年でもあります。だからこそ、鈴木選手の今後の選択には慎重さが求められます。早期のビッグクラブ移籍はリスクを伴う一方で、パルマでもう1年経験を積むことで、より確実なステップアップを狙うことも可能です。
中田英寿氏や長友佑都選手のようにシーズン途中での移籍という選択肢もありますが、GKというポジションの特性上、環境に慣れるまでの時間も考慮する必要があります。
どの選択が「最適解」かは今後の動向次第ですが、いずれにしても、セリエAで評価を高めた鈴木選手が、新たな歴史を切り拓く存在であることは間違いありません。彼の未来に大きな期待が寄せられています。
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